職場で仕事を任せてもらえない理由はいくつか考えられます。
自分の実力を勘違いしてしまっている、正当な評価がされていない、上司のマネジメント能力が低いなど様々です。
個人的に嫌われているという幼稚な理由であることもあるでしょう。
これらの理由以外に影響を与えるものとしてその場で共有されている評判があります。
一度つくられた評判に上司が流されることで仕事を任せるときの判断を無意識に放棄してしまうのです。
上司が皆から信用されている人に仕事を任せたくなる理由
上司が新しく仕事を割り振るときに毎回、部下の適正を精査しているわけではありません。
脳は省エネしたがるので簡単な方法で決めます。
その方法の一つが皆からの評判を基準にするということです。
複数が信用できると思っているということが判断材料となるのです。
人間は誰でもそういうところがあります。
ネットで買物するときはクチコミを当てにしますし、選挙でも皆が投票する人に投票するという人もいます。
皆からの評判での判断を繰り返しているうちに何となくの優先順位ができます。
するとさらに簡単に仕事が割り振れるようになります。
そしていつも仕事を任される人が固定化してくるのです。
この人たちが上位にいる限りは下位の人たちは仕事を任せてもらえなくなります。
これは実力差や性格の良し悪しの問題ではありません。
皆から信用できる人という評判を受けているかどうかの問題です。
そしてその評判は雰囲気で決まったりするのです。
「信用を失うのは一瞬」とは限らない
良い人だと思っていた人がゴミをポイ捨てすると実は悪い人なのではないか?と思うことがあります。
「信用を得るには長い時間がかかるが失うのは一瞬」などと言われることもあります。
私たちは相手の行動を観察しながら評価を更新していきます。
そのためいつも仕事を任せてもらえる人でも失敗が続けばやがては仕事を任せてもらえなくなるのでは?と思うかもしれません。
しかし複数の人間から「信用できる人物」という評判を得ている人においてはそうとも限らないのです。
皆から信用されている人は失敗したり不誠実な行動を取っても信用を失い難いのです。
仕事を割り振る上司も失敗をしたことは認識します。それでもまた仕事を任せるのです。
最初に多くの人間からなされた信用は覆り難い
皆が支持している人を自分の判断のみで低い評価に変えるのは難しいことです。
このことはマックス・プランク研究所のガブリエル・ベルッチ博士らの実験でも分かっています。
実験では裏返した2枚のカードから大きい数字を引き当てるというゲームを行いました。
プレイヤーを助けるために2枚のうちの1枚の数字を見せられた人がアドバイザーとして助言をしてくれます。
アドバイザーには信用できるという評判を持つ人とできないという評判を持つ人がいます。
(といってもどちらもコンピュータが人間のふりをしているだけですが)
実験の中で信用できるアドバイザーは必ずしも正しい助言をしたわけではありませんでした。
そのことはゲーム終了後にプレイヤーにも知らされます。
それでもその後に行われた信用度を計測するための新たな実験でプレイヤーは信用できるとされたアドバイザーを高く評価しました。
この実験ではもう一つ分かったことがあります。
それは最初に信用できると思われた人が後で不正を行ったときのほうがその逆のパターンよりも評価は高いということです。
つまり最初に多くの人間からなされた信用は覆り難いのです。
仕事を任せてもらうためにするべきこと
これまでの説明により実力差以外の部分で仕事を任される人と任されない人が生まれることが分かったと思います。
仮にあなたが仕事を任せてもらえない立場だったとしたらどうすれば良いのでしょうか?
上司が無能すぎて配置換えの希望も叶いそうにないのなら転職というのも一つの手になるでしょう。
しかしあなたが信用されにくいタイプなら転職しても同じことが起こってしまうかもしれません。
仕事を任せてもらえない状況なら上司に成長したいのでアドバイスをして欲しいと相談するのが良いでしょう。
誰でも頼られれば嬉しいですし期待に応えたいと思うものです。
たとえ「管理職になんてなりたくなかった」と言っている上司であってもです。
なぜなら人は自分が重要な人物でありたいという欲求を持っているからです。
頼られることによって自分の価値が上がったような気分になりその欲求が満たされることになります。
この心理をうまく利用することによって上司からのサポートを引き出すことができます。
そして仕事も意識して任せてもらえるようになるでしょう。
参考文献:Bellucci, Gabriele, et al. (2020). Honesty biases trustworthiness impressions.