情動的共感(感情的共感)と認知的共感そして遺伝子の話

共感には2種類があります。
無意識かつ自動的に感情を共有する情動的共感(感情的共感)と、相手の視点で考えてみるといったように意図的に相手の心を理解する認知的共感です。

この2つは脳内の反応する場所にも違いがあるため人によってどちらか一方だけが優れていたりとアンバランスな状態になることがあります。
HSPのように両方の共感力が優れているというケースもあります。

情動的共感(感情的共感)

情動的共感とはまるで感情が伝染してくるかのように自動的に入り込んでくることで起こります。
こういった現象を情動伝染と呼ぶこともあります。
近くで誰かが悲しんでいると自分まで悲しくなってしまう状態です。

心理学者メラビアンとエプスタインの作った情動的共感の強さを調べるテストに「QMEE (Questionnaire Measure of Emotional Empathy)」があります。

かなり古い質問表ですが今も共感性を計る尺度として使われることがあります。
情動的共感についてより詳しく理解するためにいくつか抜粋します。

  • 緊張しているように見える人が周囲にいると自分も緊張する
  • 友人の問題に感情的に関わる傾向がある
  • 周囲の人の影響を受けやすい
  • 悪いニュースを聞くと自分をコントロールできなくなる
  • 人がプレゼントを開ける瞬間を見るのが好き
  • 動物が苦しんでいるのを見ると動揺する

エレイン・アーロン博士のつくったHSPのテストに似ている部分もあります。
自分に当てはまると思った人も多いかもしれませんが当然です。
HSPの人は情動的共感の能力が高い傾向にあるのです。

⇒ HSPチェックのためのテスト(詳細版)

認知的共感

英語で「put oneself in a person’s shoes」という言葉があります。
直訳すると「誰かの靴に身を置く」となりますが「同じ立場ならどう考える?」という意味です。
この言葉はまさに認知的共感を表しています。

認知的共感とは意図的に相手の視点に立ってその思考を想像し理解することで実践されるものです。

情動的共感と異なるところは「あの人はいまとても悲しんでいるはずだ」と理解しても自分の心まで悲しくなることはないという点です。
思考を理解しても感情を共有することはないのです。

カウンセラーが相談者の感情を理解するもの認知的共感に近いと言えます。

ケンブリッジ大学が開発した相手の目を見ることで何を考えているかを読む「Eyes Test」というものがあります。

これによって人は目を見ることで感情を読み取る能力があることが示されました。
認知的共感の高さを調べることもできます。
このテストをすると女性のほうがスコアが高い傾向にあります。

女性に関しては認知的共感と遺伝子との関連も見つかっています。
認知的共感に役割を果たす脳基底核の線条体で活発になるLRRN1という遺伝子の影響が示唆されました。

つまり女性に関していえば認知的共感は遺伝子の影響を受けているということです。
だからといって変化させられないわけではありません。環境の影響も考慮する必要があります。

バランスが大切

情動的共感と認知的共感のバランスが取れていないと問題が起こりやすくなります。

HSPは情動的共感も認知的共感も両方ともに優れている

HSPは情動的共感も認知的共感も両方とも優れすぎている人が多いです。
相手の感情が勝手に入り込んできて、そこから相手の視点に立って考え過ぎてしまうのです。
両方の共感力が高過ぎると精神的な負担が大きいです。

認知的共感に偏っていると冷たい人と思われる

サイコパス(精神病質者)は「人の気持ちが分からない」と言われることがあります。しかしそれは少し違います。
情動的共感は苦手ですが認知的共感は優れている人が多いのです。他人を操ることが得意なのはこのためです。

サイコパスに限らず認知的共感だけに偏っていると冷たい人という印象を持たれてしまうことがあります。
管理職の人などには必要な能力ですが時には気持ちを共有することも必要です。

情動的共感に偏っていると空気が読めないと思われる

情動的共感に偏っている人は悪意なく人を傷つけてしまったり空気の読めない人と思われる可能性があります。

辛い立場にいる人にとっては同じように苦しむことが必ずしも癒しにつながるわけではないのです。

それよりも相手の視点にたって具体的なフォローをしたほうが喜ばれることもあります。
これについては「リングセオリー:辛い立場の人に余計な言葉を掛けて傷つけないための理論」にも記載しました。

共感力はコントロール可能

認知の再構成やマインドフルネス、ロールプレイなど方法は様々ですが特殊な事情のない限り情動的共感も認知的共感もある程度はコントロールすることが可能です。

HSPだからと諦める必要はありません。

【参考文献】
Mehrabian, A., & Epstein, N. (1972)QUESTIONNAIRE MEASURE OF EMOTIONAL EMPATHY (QMEE)
Warrier V, et al(2017)Genome-wide meta-analysis of cognitive empathy: heritability, and correlates with sex, neuropsychiatric conditions and cognition.

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