ミラーニューロンが共感に関連しているという証拠は少ない

共感力の高さを説明するときによく用いられるのがミラーニューロンです。
HSPの人はこの神経細胞が反応しやすいため他人の感情が伝染してくると説明されることが多いです。

しかしミラーニューロンと共感の強い関連を示すエビデンスは少ないようです。
HSPの文脈においてミラーニューロンに懐疑的な視点で書かれたネット上の記事が見当たらないので注意喚起のためにも簡単に説明しておきます。

ミラーニューロン論文のメタアナリシス

オーストラリア・ディーキン大学のスーカイナ・ベカリらの分析によるとミラーニューロンが共感に関係しているという証拠は少ないという結果が出ています。
彼女らが何を行ったかというとミラーニューロンと共感について執筆された論文のメタアナリシスです。

メタアナリシスとはすでに行われた研究の結果を統合して統計的方法で解析する手法です。
単独の研究を報告する1本の論文よりもこちらのほうが信憑性は高まるとされています。

研究チームが選定したのは英語で書かれた人間のミラーニューロンを対象とした51本の論文です。
これらの研究結果を情動的共感、認知的共感、運動共感の3種類ごとに分けて相関を調べました。

その結果、ミラーニューロンと共感について次のことが分かりました。

運動共感(他人の動きの模倣)
・関係があるというデータなし
情動的共感(感情の共有)
・下頭頂小葉での有意な関連はなし
・下前頭回で弱~中程度の関連あり
認知的共感(相手の立場で考える)
・下前頭回で中程度の関連あり

メタアナリシスの対象となった論文ではミラーニューロンの強い関連を示すことは出来ないようです。

各々の実験では被験者の数が少ないことや記録方法に差異があるなどの問題もあります。
また否定的な結果が出た研究は肯定的な結果が出た研究に比べて公表されにくい(出版バイアス)という問題もあります。

ただし一応の関連を見出すことは出来ています。そして今後の新しい実験によってはさらに強いエビデンスが見つかるかもしれません。

常に幅広く情報収集しておかないと間違える

もともとミラーニューロンは猿の実験から見つかったものです。

そして人間でも他者の行動を見たときにそれに関連する脳の部位が反応することが分かったのです。
だからといって共感まで生み出すというのは理論が飛躍しすぎではないかという批判は以前からありました。

私の個人的な意見としてはそれなりに信用できる機関で実施された実験の個別レポートを読む限り、ミラーニューロンと情動的共感の関係は今回示された相関よりはあるのではないかと思います。
私が読みたいように読んでいるからバイアスがかかっている可能性もありますが……

共感についての研究ではミラーニューロン以外の神経基盤の活動も考慮しているものが複数出ています。
なので共感力の高さについてなんでもかんでもミラーニューロンで説明するカウンセラーがいたら要注意です。
最新情報にキャッチアップできていないということです。

ミラーニューロンを含めHSPに関連する事柄の研究は多く行われ精度が上がる度に結果が変化していることがあります。
数年で以前の結果が覆されることもあります。結果が対立することもあります。

そして困ったことにこれらの論文にHSPという単語は出て来ません。他の事を知るために実験しているからです。
そのため幅広く情報を収集しておかないと間違った知識に基づいてHSPの改善に取り組むことになってしまいます。

【参考文献】
S Bekkali, et al(2019)Is the Putative Mirror Neuron System Associated with Empathy? A Systematic Review and Meta-Analysis.

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