「HSPに向いている仕事」を信じると人生終わる

「HSPに向いている仕事」を信じると人生終わる
 

HSP関連のブログなどで「HSPに向いている仕事一覧」などが記載されることがありますが真に受けてはいけません。一覧を作った人の職業に対する勝手なイメージで作っているので科学的根拠がありません。それを信じて仕事を選んでも天職には巡り合えないでしょう。それどころかメンタルがボロボロになる危険さえあります。

カウンセラーはSEの仕事内容を具体的に答えられるのか?

たとえばHSPに向いている仕事としてよくSEやプログラマーを挙げるカウンセラーや転職コンサルタントなどがいます。しかしその人達に「SEは具体的にどんな仕事をするのですか?」と聞いても答えられないと思います。

私は簡単なコードくらいは自分で書けますし、SEやプログラマーと一緒に仕事をすることもあります。しかし仕事選びに悩むHSPにSEの仕事を具体的に教えてほしいと言われても答えることはできません。
「○○という会社のSEはこういう仕事です」と答えることはできますが、SE全体をひとまとめに答えることは不可能なのです。なぜなら会社によって仕事内容が全く違うからです。

HSPに向いている仕事としてSEやプログラマーを挙げる人はパソコンの前で黙々とコードを書いているところしかイメージしていないのかもしれませんが、パソコンの前に座っている時間よりも打ち合わせをしている時間のほうが長い人もいますしコードを全く書かない人もいるのです。元請か下請かでも違いますしどの工程を担当するかでもやることは違うのです。

ちなみにIT系の技術者の多くに共通する特徴があるとしたら脳のワーキングメモリを消費するということだと思います。複数のことを同時に行うのが苦手とされるHSPに向いている人が多いとは言い切れないのではないでしょうか。

同じ職種でも会社によって仕事内容が違うのは他の業界でも同じです。私は経営コンサルティングの仕事もしているので様々な会社に入り込みそこの社員と机を並べて仕事をすることがありますが同じ職種だからといってどこの会社も同じ仕事内容だったということはありませんでした。

共感力を活かすことのリスク

HSPは共感力が高いのでそれを活かせとアドバイスをする人もいます。対人援助などの仕事をしろと言ったりします。しかしこれは非常に危険です。

HSPにどんな仕事が向いているかを体系的に調べた研究はありません。しかし個々の仕事の精神的なリスクを調べた研究はいくつかあります。これらの研究はHSPが対人援助の仕事に就いているときのことを調べたものが多いです。

たとえばHSPの看護師はストレスを受けやすく燃え尽き症候群のリスクも高いというアンジェロ州立大学の調査などがあります。

仕事で必要な共感力とは相手の悲しみを見て自分も悲しい気持ちになるというものではありません。必要なのは理性的に相手の視点に立ち感情を読み解くという共感力です。情動的共感と認知的共感の違いといいます。仕事で共感力を活かそうというときにこの2つを区別せずに考えるのは非常に危険な行為です。

心に傷が残る辛い体験をした人の話を聞いた人が自分までPTSD(心的外傷後ストレス障害)になることを「二次受傷」といいますが、対人援助の仕事ではこれが問題となっています。相手の感情の影響を受けやすいHSPは注意しなければならないのです。

HSPがカウンセラーに向いていない可能性があるのもこういった要因があります。

仕事は何をするかより誰とするか

HSPは向いている仕事は何か?ではなく向いている環境は何か?という視点を持つことが大切です。

職業生活の質を測定する尺度に「ProQOL(Professional Quality of Life)」というものがあります。仕事で他者を思いやることの満足度と疲労度、二次受傷などの良い影響と悪い影響を知るのに役立ちます。

セビリア大学が1,566名の医療従事者と教育従事者を対象に行ったProQOLの調査ではHSPは思いやることの疲労度と燃え尽き症候群のリスクが高いことが分かっています。しかし思いやりの満足度が高いとこれらのリスクは低下することも分かっています。

思いやりの満足度は相手を上手く援助できるという前向きな感情や手順通りに仕事ができる効力感、自分の仕事が好きという感覚や成功しているという感覚によって得られます。これらは職場環境、顧客のタイプ、個人のスキルの影響を受けます。つまり同じ仕事をしていてもストレスになるか満足感になるかは環境の影響が大きいということです。

実際に相談に来るHSPの話を聞いていても同じ職業でも仕事が楽しいという人もいれば苦痛という人もいます。仕事は何をするか以上に誰とするかが非常に重要なのです。

人口の30%に向いている仕事が全部同じなのか?

HSPは人口の20%から30%はいるとされています。これだけの大きなカテゴリに属する人達に向いている仕事がすべて同じと考えるのはおかしな話です。

少し思い出してほしいのですがあなたが今の仕事に就く前に抱いていたイメージと実際に今やっている仕事内容はかなり違うのではないでしょうか?こんなに精神的に負担のかかる業務もあるなんて気づかなかったということも多いと思います。

それを思い出せばカウンセラーや転職コンサルタントが印象でつくった「HSPに向いている仕事一覧」がどれだけ無意味なものか分かると思います。

参考にした論文:Sensory Processing Sensitivity and Compassion Satisfaction as Risk/Protective Factors from Burnout and Compassion Fatigue in Healthcare and Education Professionals.