透明性の錯覚:相手に心が見透かされている気がするのはなぜか?

職場や学校で誰かと話すときに心の中が見透かされているように感じることはないでしょうか?
特に相手が上司や先生、恋人などのときにこのような感覚に陥りやすくなるかもしれません。

それによって相手から怒られたり疑われたりするのではないかと不安になってしまう人もいます。
酷い人になると業務上の報告をすることさえ恐れてしまうようになります。

しかし実際に自分の心の中が相手に見透かされているというケースは少ないです。

それでも心が読まれていると勘違いしてしまうのは「透明性の錯覚」という心理現象が起こっているからです。

透明性の錯覚とは

透明性の錯覚とは自分の考えや思考が相手に見透かされていると過大に思い込む傾向のことです。
認知のバイアスの一種です。

なぜこのようなことが起こるかというと私たちは感情や行動を自分の視点で見ている時間が圧倒的に長いからです。

そのため他人がどう考えているだろうかと予測するときにもその影響を受けてしまい客観的な判断が難しくなるのです。

内部状態の経験に基づいて判断を固定してしまうのです。
このように当初からある特定の情報が錨のように思考を縛り付けることを「アンカリング効果」といいます。

ほとんどの人は「人によって考え方は異なるもの」と理解しています。
しかし常にその思考を意識して生活しているわけではありませんから透明性の錯覚が生じてしまうのです。

なぜあなたは人前で話すことが苦手なのか?

透明性の錯覚が発生するのは職場や学校で誰かと1対1で話すときだけではありません。

大勢の前でスピーチをするときなどにも起こり得ます。
「緊張しているのが皆に見透かされている」と思ってしまうのも透明性の錯覚が起こっているケースが多いです。
この場合にも後で聴衆に聞いてみると全くそうは見えなかったと言われる可能性のほうが高いです。

また実際よりも他者の注目を集めていると勘違いをする「スポットライト効果」が起こると更に透明性の錯覚は強まります。

人前で話すことが苦手な人はこれらのバイアスが強くかかっていると考えられます。
悪い意味で自意識が過剰なのです。

他人が指で刻んだリズムから曲名を当てられる?

透明性の錯覚は1998年の心理学者のトーマス・ギロビッチ博士の論文が初出とされています。

博士が行った実験は参加者に嘘をつかせてそれがどれくらい見破られるかを予想させるというものです。
本人が思っているほどには嘘がバレなかったという結果となっています。

誰でも簡単に透明性の錯覚を試すことの出来る実験もあります。

エリザベス・ニュートン博士が スタンフォード大学の院生だった頃に考案したものでやり方は簡単です。

頭の中で音楽を奏でながら指で机を叩いてリズムを刻むのです。
それを誰かに聞かせて何の曲か当てさせるというものです。

指をタップしている人は簡単に当てられると思う人が多いですが、実験では約3%しか正解されませんでした。

透明性の錯覚への対処法

先述のギロビッチ博士は参加者に人前でスピーチをさせる実験も行っています。

スピーチする人の中には事前に透明性の錯覚について説明された人たちもいます。

その結果、事前に説明を受けた人たちは自分のスピーチの出来に対する評価が高くなりました。

それだけでなく聴衆からの評価も高かったのです。
なぜなら実際のパフォーマンスも良かったからです。

他の実験でも適度な緊張がパフォーマンスを高める効果があると事前に知らされることで本当に良くなるということは分かっています。

つまりあなたが透明性の錯覚によって不安や恐れを感じないようにするためには、そういった現象が起こるのは当然のことだと知っておけば良いのです。

また世の中には自分が優位に立つために相手の心を見透かしているような仕草を見せる人もいます。
しかしほとんどがパフォーマンスです。
彼らが本当に心の中を読めているということはないので安心してください。

参考文献:
Gilovich Thomas, et al. (1998). The illusion of transparency: biased assessments of others’ ability to read one’s emotional states.
Kenneth Savitskya, Thomas Gilovichb. (2003). The illusion of transparency and the alleviation of speech anxiety.

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