ピルが情緒不安定やうつ病につながるという研究結果

ピル(経口避妊薬)を服用している人の中には情緒不安定になったり気分の落ち込みを感じる人もいます。

これは一部の研究でも可能性が示唆されていることです。

ホルモンのバランスを変化させる以上はこういった副作用が生じるのは不思議なことではありません。

また恐怖や不安を克服するための心理療法の効果が発揮されにくい場合もあります。

ピルは避妊以外の目的で用いられることのほうが多い

ピルが避妊に効果的なのは卵胞ホルモン(エストロゲン)と黄体ホルモン(プロゲステロン)を体内に取り込むことにより脳が妊娠していると錯覚するからです。

それにより排卵を抑制するため本当の妊娠をしないのです。

ピルは避妊のため以外にも多く用いられる

ピルは元々、避妊のために開発された薬ですが現在では月経痛やPMS(月経前症候群)による情緒不安定の緩和のために服用する人のほうが多いとされています。

メンタルヘルス上のメリットも期待できるのです。

副作用も少ないとされる

一般に広く用いられるものは効果が得られる限度まで濃度を低くした低容量ピルと呼ばれるもので、副作用もほとんどないとされています。

性交後の緊急避妊に用いられるモーニング・アフターピルも吐き気を感じるのは数%とされています。

しかしいくつかの研究においてピルが情緒不安定やうつ病のリスクを高める可能性が示唆されています。

ピルの影響による情緒不安定とうつ病

スウェーデンの研究者が行った実験によるとピルの服用が気分の落ち込みにつながる人がいることが分かっています。

幸福感や自己制御、活力の低下

この実験では18歳から35歳までの340人の健康な女性にピルもしくはプラセボ(偽薬)を服用させました。

使用されたのは広く低容量ピルの成分として普及しているエチニルエストラジオールとレボノルゲストレルを含む錠剤です。

実験参加者は自分が本物と偽薬のどちらを服用しているのか知らされません。

3ヶ月間に渡り気分を調べたところピルを服用していた参加者のほうが幸福感や自己制御、活力の低下が大きいことが分かりました。

この実験では抑うつの症状は見られませんでした。

別の研究ではうつ病リスクが高くなるという結果

しかしコペンハーゲン大学の研究ではピルを服用している女性のほうがうつ病リスクが高いという結果もあります。

また10代の一定の時期に服用することでその後のうつ病リスクを高めるという研究もあります。

アメリカの国民健康栄養調査に登録された20歳から39歳までの1,236人データを調べた研究によると約半数が10代のうちにピルの使用経験を持っていました。

これらの女性はピルを服用したばかりの人や服用したことがない人と比べて成人後のうつ病のリスクが高いことが分かっています。

動物実験では脳の発達に関係することが判明

動物実験ではエストロゲンやプロゲステロンは脳の発達に関係することが判明しています。

同じことが人間でも起こると考えれば脳の発達途中である10代の時期にピルによってこれらのホルモンのバランスを変化させることが何らかの影響を与えている可能性が考えられます。

心理療法の効果にも影響を与える

ピルを服用している人は心理療法の効果が得難いという研究もあります。

クモ恐怖症(アラクノフォビア)の克服には暴露療法という手法が用いられることが多いです。

苦手なものに少しずつ近づくことで慣れて恐怖を減らすという方法です。

ピルを服用していない人のほうが恐怖が減少

ドイツのルール大学がピルを服用している人としていない人にこの暴露療法を行ったところ2つのグループに差異が生じました。

6週間後のフォローアップではピルを服用していない人のほうが恐怖の減少を強く感じていたのです。

恐怖を減少させる内因性エストロゲンの分泌が抑制されたことが原因ではないかと考えられます。

不安なら医師に相談を

最後になりますが今回紹介した実験を通してピルの危険を喧伝したいわけではありません。

しかし情緒不安定やうつ病のような症状を感じているのであれば医師に相談することをおすすめします。

参考文献:
Christine Anderl. (2019). Oral contraceptive use in adolescence predicts lasting vulnerability to depression in adulthood.
Charlotte Wessel Skovlund, et al. (2016). Association of Hormonal Contraception With Depression.
Niklas Zethraeus, et al. (2017). A first-choice combined oral contraceptive influences general well-being in healthy women: A double-blind, randomized, placebo-controlled trial.
Friederike Raeder, et al. (2019). No pills, more skills: The adverse effect of hormonal contraceptive use on exposure therapy benefit.

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