バンテージ・センシティビティとは?ポジティブな感受性

バンテージ・センシティビティとは?ポジティブな感受性
 

バンテージ・センシティビティとはポジティブな環境に対する感受性のことです。
ポジティブな環境というのは恵まれた家庭や友人関係、質の高い教育や治療、カウンセリングなどが該当します。

このようなポジティブな環境から良い影響を受けやすい人はバンテージ・センシティビティが高いといえます。
たとえばカウンセリングを受けたときに他の人よりも効果が現れやすかったり、質の高い教育を受けたときに他の人よりも学習効果が高くなるということです。

HSPの中にも高いバンテージ・センシティビティを持つ人は存在します。

感受性の誤解

感受性というのはネガティブだけではなくポジティブな環境に対する反応の程度も意味します。

それにも関わらずHSPの特性の説明でもそうですが感受性というとネガティブな環境に対する敏感さばかりが注目されます。
「敏感すぎることによる生きづらさ」などという表現がされることもあります。

しかしHSPはポジティブな環境にも敏感ですからネガティブな環境への感受性のみ高い人を表す名称として使用するのは間違いです。

良い影響がどれくらい出るかにも個人差はある

実はネガティブな環境に対する感受性のみを表すモデルは存在するのです。
精神疾患の発症のしやすさを説明するモデルとしてよく使われるDiathesis-stress model(脆弱性ストレスモデル)などがそれです。

反対にポジティブな環境に対する感受性のみを表すモデルは最近まで存在していませんでした。
なぜならポジティブな影響はほとんどの人に同程度の恩恵をもたらすという暗黙の前提がありそれほど意識されることがなかったからです。

しかし同じポジティブな環境にいてもそこから受ける恩恵にも個人差が存在するはずです。
そしてその個人差を明らかにすることで心理療法や保育、教育に活用できる可能性があります。

そこで2013年にロンドン大学のマイケル・プルース博士とカリフォルニア大学のジェイ・ベルスキー博士によって提唱されたのがバンテージ・センシティビティなのです。

バンテージ・センシティビティの因子

ではどのような人たちがバンテージ・センシティビティが高いといえるのでしょうか?
マイケル・プルース博士とジェイ・ベルスキー博士が過去の複数の研究を分析して判明した3つの因子を説明します。

1.感覚処理感受性が高い

感覚処理感受性が高い人(HSP)はバンテージ・センシティビティが高い可能性があります。
生まれたときに母親から気難しいと判断された赤ちゃんが質の高い子育てを経験した場合、11歳時点での社会性と学力が有意に向上していることがわかりました。
気難しいと判断されなかった赤ちゃんでは質の高い子育てによってこのような恩恵を受けることはありませんでした。

また11歳を対象に行ったレジリエンスを高めるプログラムでもHSC(感覚処理感受性の高い子供)とされる子供に抑うつ症状の有意な減少が見られました。

2.生理的反応が高い

自律神経とホルモンの制御機構などの生理的反応の高さもバンテージ・センシティビティに関係しています。
破壊的行動障害を持つ子供を対象にした研究ではストレスを受けたときの生理的反応であるコルチゾールの反応性が高い子供は治療により攻撃性と反抗的行動が有意に低下することが分かっています。

またコルチゾールの反応性が高い子供が問題のない家庭で育った場合に向社会性が高まることも分かりました。コルチゾールの反応性が低い子供ではこのような影響はありませんでした。

3.遺伝子型

3つ目は遺伝子型です。
ドーパミン受容体D4遺伝子が7回繰り返された型を持つ子供は母親から質の高い子育てを受けることによって向社会性が増すことが分かっています。
他にセロトニントランスポーター遺伝子多型(5HTTLPR)の繰り返しも関連するとされています。

HSPの中にもバンテージ・センシティビティの高い人はいる

HSPの特性を示す感覚処理感受性もバンテージ・センシティビティもあくまでモデルですから相互に排他的なものではありません。

説明した通り感覚処理感受性の高い人(HSP)の中にもバンテージ・センシティビティの高い人はいます。

HSPの人は生きづらいだけと勘違いしているかもしれません。
しかしカウンセリング等で他の人よりも高い効果を得られる可能性もあるのです。

そして自分のバンテージ・センシティビティの高さに気づいていないだけという可能性もあります。

参考にした論文::Vantage sensitivity: Individual differences in response to positive experiences.