何度も会っている人に好感を覚える現象を心理学で「単純接触効果」と呼びます。
論文にまとめた心理学者の名前から「ザイアンスの法則」と呼ぶこともあります。
学校や会社で出会った頃は何とも思っていなかったのに何回も顔を合わせているうちに好きになってしまうことがあるのもこの効果と言えます。
電車の中で毎日見かける相手のように話したことのない相手でも単純接触効果は起こります。
心理学者のロバート・ザイアンスは次のような実験を行いました。
- 記憶力のテストをすると言って被験者を集めます
- あらかじめ準備しておいた12枚の写真をランダムに表示して見せます
- 表示する回数は写真によって1回、2回、5回、10回、25回と変えます
最後に写真に写っている人物の好感度について調査したところ表示回数に比例して好感度が高くなるということが分かりました。
別の実験では実際の人間を使って調査が行われました。
大学の大教室で行われる講義に他の学生と親しくならないという条件で一定期間に3人の女子学生を出席させます。
学期の終わりにこの3人に一度も講義に出席しなかった女子学生を1人加えた4人に対する好感度を他の学生に調査しました。
すると出席回数の多かった女子学生ほど好感度が高かったのです。
これらの実験からは単に顔を合わせているだけでも好感度は増すということが分かります。
単純接触効果は人だけではなく物に対しても起こります。
買物をするときにCMで何度も目にしている会社やブランドの商品を手にしてしまうのはこのためです。
企業が高いお金を払って何度もCMを流すのは商品の魅力を伝えるという目的の他に視聴者に親近感を抱かせるという目的もあるのです。
自社の社名しかアピールしないCMはまさに単純接触効果を狙っていると考えられます。
人は何度も目にしている人に対して警戒心が薄れ親近感を持つようになります。
それがやがて好きという感情になることもあるのです。
何時間会ったかよりも何度会ったかの方が大切とも言われています。
1度に10時間会うよりも1時間ずつ10回会ったほうが好きになりやすいということです。
そういう意味では同じ会社や学校にいる異性というのは恋愛関係になりやすいといえます。
恥ずかしがり屋で奥手なため好きな人にアピール出来ないという人は話しかけなくても良いので相手の視界に入る努力をしましょう。
ただし単純接触効果にも限界があり一定の回数を超えたところで好感度の上昇はストップすると言われています。
100回会うのと200回会うのではそれほど差はないということです。
また第一印象が悪かった場合は会うたびに好感度が下がるため逆効果と言われています。
初対面で嫌われてしまった場合はそのイメージを良くすることから始めなければならないのです。